Splatoonと2000年代文化
Splatoonの完成披露試射回楽しそうですね。とてもプレイしたいんですが、残念ながらWii Uを持ってないので動画を見てその欲求を抑えている昨今です。便利な時代ですね。昔はファミ通がこの機能を担っていたと思うのですが...
ところでこのSplatoon初めて見たときから思っていたのですが何だか懐かしい!最近この懐かしさの正体についてぼんやりと考えていたのですが自分の中で少し繋がってきた気がするのでまとめようと思います。
この懐かしさはずばり2000年代前半感!(結局ぼんやりしちゃってますけど)まず同じゲームのカテゴリから言うと一番分かりやすいのがセガのジェットセットラジオ。ジェットセットラジオはインラインスケートを装着したキャラクターが架空の街トーキョーを舞台に縦横無尽に飛び回りグラフィティを描いて回るアクションゲーム。BGMはヒップホップなどが使われSEにスクラッチの音がなどが多用される。作中のビジュアルなどには原色が使われており、キャラクターのファッションや音楽などを含めてSplatoonに似ているなと。このジェットセットラジオ、実は90年代の裏原ブームの影響をかなり受けているのではないか。
自分自身実際にこの時代を生きていたわけではないので厳密な定義をすることは難しいが、裏原ブームとは超簡単に言ってしまえば、既存のモードではないストリートを舞台に始まったファッションムーブメント。特にこれらのブランドは密接に音楽と関わっていた。藤原ヒロシはもともとDJをやっていたし、NIGOは藤原ヒロシ2号が由来だということもありもちろんDJカルチャーに造詣が深い。UNDERCOVERの高橋盾もロック好きなことで有名でありその服には多くのロック的エッセンスが注入されている。ここでは主にNIGOらが主に担ってきたDJ文化を含むストリートカルチャーに焦点を当てたい。
NIGOのA BATHING APE(以下BAPE)はもともと自作のプリントTの販売から始まったらしいが、その存在はNIGOの友人たちしか知らないようなかなりアングラなものだった。そのBAPEが有名になったのが彼と親交の深いアーティスト達によるBAPEの着用である。スチャダラパーやコーネリアスの小山田圭吾がライブなどで着用し、徐々に知名度を獲得していったらしい。(wikipediaより)これを考慮するとやはりBAPEの発展には渋谷を中心とする音楽カルチャーが密接に関わっていたことがわかる。その後BAPEはラッパーを中心に着られることになる。特にNIGOと海外のラッパーとの親交は有名でPharrel Williamsとのコラボレーションは記憶に新しい。TERIYAKI BOYZなどNIGOは日本のラッパーとのコラボレーションも数多くおこなっている。ストリートファッション誌Ollieなどでもよく取り上げられていた通りBAPEなどの裏原系ブランドは主にスケーターやラッパー(に憧れる中学性が大半かもしれない)に受容されていたといえるのである。
これらを踏まえた上でジェットセットラジオを見てみるとこのゲームは90年代後半から突如として出現した裏原系ムーブメントからかなり影響を受けていることがわかる。ジェットセットラジオ全体の色使いである原色感もBAPEなどの B系ブランド(現在ではほとんど使われなくなってしまった感のある言葉だが)の色使いと共通している。そしてファッション自体もビートがヘッドホンを着用しているなど独特のヒップホップ感が醸し出されているのである。ここで気づくのがSplatoonとジェットセットラジオのビジュアルの類似性だ。タギングして縄張り争いをするジェットセットラジオに対してSplatoonではイカスミを塗りたくって縄張り争いをする。そしてそのスミはジェットセットラジオのグラフィティのように目が痛くなるほどの原色。さらにSplatoonのプレイヤーキャラクターでもある女の子のイカちゃんはヘッドホンを着用しているのである!しかもSplatoo内で装備品などが買える広場「ハイカラシティー」は明らかに渋谷をモデルとしており、この辺も架空の街トーキョーを舞台とするジェットセットラジオに類似しているといえる。この事実を考慮するとSplatoonの意匠はジェットセットラジオにかなり近いものだといえるのではないか。個人的には大暮維人の「エア・ギア」もジェットセットラジオ的なストリート文化の流れを汲んでいたと思うのだがどうだろう。(最終的には少年漫画特有の力のインフレ起こりすぎてよくわからなくなった感はあるが)
Splatoon for Wii U: 1 HOUR OF GAMEPLAY w ...
Let's Play Jet Set Radio - Part 1 - Welcome to ...
しかしSplatoonから私が連想するのはジェットセットラジオだけではない。セガのスペースチャンネル5。これは所謂音ゲーでジャンルは異なるのだけれどやはり世界観に同じ雰囲気を感じる。キャラクターも色彩が原色使いであり、音楽はヒップホップでこそないが渋谷系感漂う音楽が使われており裏原と同じ時代を生きたTEI TOWAの世界観に近いものを感じる。得てしてこれらのゲームは渋谷を中心とした音楽、ファッションカルチャーからの影響をかなり受けていると考えることができるのではないか。音ゲー『パラッパラッパー』などはこれらの走りであったわけで。
Space Channel 5 Full Gameplay - YouTube
"Technova" TOWA TEI with Bebel Gilberto - YouTube
今思い返してみるとでは2000年代以降の音楽ってヒップホップなどのストリートカルチャーに影響された音楽が多かった気がする。Dragon AshからOrange rangeまであの頃のバンドでラップを導入していたアーティストをあげればキリがない。当然RIP SLYMEやKICK THE CAN CREWなどを筆頭にヒップホップグループが堂々とメジャーで活躍していた。(RIP SLYMEは今も現役だが。)しかし10年代以降の音楽シーンを見てみるとそうしたヒップホップを取り入れたグループがほとんどないということに気づかされる。音楽チャートの上位に登ってくるのはEDM系かアイドルだ。2000年代の裏原系を中心としたストリートカルチャーは終わったのである。(NIGOはBATHING APEを辞めたし、UNDERCOVERはパリコレでコレクションブランド化している。)
そんな時代状況の中で急に現れたSplatoon。私はやはりこのゲームの中に失われた2000年代あたりのストリートカルチャーの残滓を感じる。そしてそれはゲーム産業においては今までセガが担っていたものだと思う。しかし今回任天堂からこのゲームが出てしまったということであの頃のセガファンとしては何かもの足りない気がする。『龍が如く0』で80年代の歌舞伎町を再現するのもいいんだけど、私としては90年代後半から2000年第前半の渋谷を舞台にしたゲームとか作って欲しいなあとか思うわけです。完全に回顧厨だが。でもたぶんそういうの求めてる人も多いんじゃないかなあと思う。
かなり乱暴な感じがしますが自分の力不足でこれ以上書けない気がするのでここら辺で終わります。とにかくセガは頑張れ!と言いたい笑。最近のゲーム会社は短期的に収益性の高いスマホゲームへ移行し始めている中、Splatoonはコンシューマゲームのこれからの礎として、そして2000年代カルチャーの後継者としてこの先売れて欲しいなあとぼんやり思ってます。